nozomnの快適・カチョー生活辞典NozomNの 快適・カチョー生活辞典

30 標準化の憂鬱

さらにさらに

 標準化の目標は製品の品質を下げないことである。すぐに破れるストッキングであってはならないのである。しかしまた標準化の目標は製品の品質を上げないことである。いつまでも破れないストッキングを作っては業績が停滞するのである。つまり標準化とは、下限と上限を定めてその範囲に分布しないものをハネる仕組みを作ることである。監視範囲が集中するから、管理の効率も良いのである。

月に叢雲花に風

 しかしまあ、山あれば谷あり、楽あれば苦ありと申しますなあ。高等官の資格を得るために都に上った夫を、琵琶弾きつつ追い求めて再会する感動の南曲「琵琶記」にも、好事魔多しと言わせているし。下限上限を定めてその中に物事を収めようと奮闘している内に、どうしたことか、物事は下限の一線にへばり付いて離れなくなったのである。即ち標準化とは最低線ネラいと同義となった、やに見え始めた。

不不肖のブカ

 お客さまに丁寧に応接するブカを作らねばならない。しかし丁寧過ぎてはイケナイ。ちょうどその中間辺り。カチョーはそのようにビミョーな苦労をしてブカを育ててきたのだけれども、やはりねえ、ブカは最低線ネラいで応接するようになりましたぜ、旦那。ブカの姿はトツゼンそこに出現するのではなく、それを生みだしたものに似るものなのである。むしろ親に似ない不肖(ふしょう、親や師に似ず愚か)なブカなら良かったのに。不不肖(親や師に似て愚か)のブカを見、最低線ネラいの蔓延(まんえん)を見て、カチョーは標準化の全容を知ったのであった。