桃色に染まる日 3/29
雨あれば能登の旅路や山桜
雨あれば能登の旅路や山桜
汗ばむような陽気に、桜がもうすっかり花開いていつもの公園を薄桃色に染めている。煙ったような桃色が、春の眠気を誘う。
桜に見惚れていたら、姫りんごもすっかり満開になっていた。
春と初夏がいっぺんに来たような贅沢ぼんやりな日。
ミステリはシナモンの色春の塵
ロバート・B・パーカーの『初秋』を話題におしゃべり。
読んでいるとドーナッツを食べたくなるのよね、と言ってるそばから食べたくなって、タリーズまで買い出し。
春色ドーナッツを食べながら、ウエブ本棚のパーカーのミステリをあれこれ物色。上質のミステリは人生のシアワセ。
外つ国の町の端に満つ花影かな
NozomNメソッドが詰まった英会話教材 OK English が、カセットテープのまま眠っていて、ナントカシナクテハと思いながら、何年も過ぎてしまった。
これはイカンとようやく腰を上げて、データ化の手配を始めた。
あらためてDATテープを見てみると、ポートランドで編集に携わってくれたタッドの手書きのメモが添えられていた。
カップヌードル好きのタッドは、日本語を聞いたこともなかったのじゃないかと思うけれど、OK Englishの編集を終えるころには、日本語の単語をずいぶん覚えていた。NozomNメソッドが効いているねぇと、みんなでびっくりしたことを思い出した。
春疾風海の底よりとどろきも
曇り空の春分。暖かく湿った空気が、これからくる夏を予感させる。
夜の始まるころに、宮城県で大きな地震が発生した。忘れた頃にやってくると言われていた天災が、忘れる間もなくやってくる。
大きな被害にならないことを祈りながら、今夜は父にビールを供える。
あまりビールを呑まない父だったけれど、クラフトビールは気に入ってくれるかも。
麦熟るる中野孝次の生きた日々
おはぎをお供えしよう思っていたけれど、色にひかれて、苺大福。
ハイカラだねと、笑う父の声が聞こえてきそう。
桜咲くすでに覚悟の一期とや
毎年楽しみな桜が咲き始めた。花と葉が同時に枝を飾る桜。この桜が一番好き。
あたたかや野にも山にもこの町にも
いつもの公園に向かう道に架かっている小さな橋のたもとに、運河に迫り出すように桜の木が植っている。
あまり日が当たらない場所なのか、遅咲きの桜。
まだほとんど蕾のままだけれど、きょうは蕾が弾けたひと枝を見つけた。
春の雷胸剥がされてゆくやうな
夕べ遅くから降り始めた雨が、春のカミナリさまを連れてきた。
胸騒ぎがするような春の嵐に、まぁまぁ落ち着けと、お白湯をいただく。
母の便り花のふくらむ気配連れ
夕べの母のメールに、「東日本大震災が明日で10年ですね。あの日はランドマークの16階で絵を描いていたことなど思い出して10年経つのは早いなぁと感慨深かったです。そんなことで、非常用の持ち出しリュックを開けて大事な証書など点検しました」とあった。
楽しいことも苦しいことも、幸せや悲しみも、さまざまが訪れるなかで、目の前の暮らしをその時なりに丁寧に紡ぐ。
それが日々を重ねることと、また母に教わる。
春の雨雨の町より降り渡る
冬の寒さが名残を惜しんでいるような冷たい雨の月曜日に、新しい町の海にご挨拶。
初めての町なのに、どこか見覚えのある海が、ザンザンと飛沫を上げていた。
オレゴンの西海岸沿いにある小さな海の町、ニューポートの波に似ているんだなぁと、思い出した。
追い抜かれる心地三月の風は
決算のし残しを終えて、久しぶりにオープンカフェ。
3月の風が暖かい。道行く人の頬もゆるんでいるようだ。