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ダナ・キャランのお財布

1995年当時、ポートランドの各地にあるショッピングモールには、たいていノードストロームとマイヤーズが入っていた。

どちらも日本の百貨店のような存在だけど、商品の幅広さでは日本にはるか及ばない。でも明るくゆったりした店内は、ショッピングしやすいし、トイレもきれいなので、ショッピングモールに行けば必ず寄る先になっていた。

ダナ・キャランのお財布を見つけたのは、マイヤーズのバッグ売り場だった。
仕事で使うためにチェック(小切手)を取り入れることになり、チェックが入る長さのお財布を探していた。

目に止まったお財布は、チェック用の仕切りがあり、ボールペンを入れる差し込み口もついている。使いやすそうで、見た目も好み。とても気に入ったのだが、残念なことに茶色しかなかった。
他のタイプは黒がある。見比べると、やっぱり黒がいい。

店員さんに訊いてみると、黒はあったのだが売れてしまったそうだ。
茶色にするか、いったん諦めて他を探すかと逡巡するわたしを見て、店員さんが「ちょっと待ってね。他のお店を当たってみるから」と電話を始めた。

いくつかのマイヤーズを当たってくれたが、どこも在庫はないらしくて、しばし考えた末にもう一軒、と掛けた先で黒いお財布が見つかった。
「ダウンタウンに、黒いお財布ありましたよ。取り置きしてもらいますか?」
名前を伝えて、取り置きしてもらうことにした。

ダウンタウンのマイヤーズで見つかったのかと思ったら、サックス・フィフス・アベニューのバッグ売り場にあったと言う。
マイヤーズとはまったく関係ないお店に訊いてくれたことにびっくりするわたしに、店員さんは、「No problem!」「あってヨカッタね」とニコニコ。

店員さんの名前はガブリエラ。マイヤーズに行くたびに、ちょっと顔を出しておしゃべりする仲になった。
こうしてポートランドの好きが積み重なり始めた。

*ガブリエラは、そのとき作っていた英会話テープ〈OK English〉に、デパートの店員さん役として登場している。
*マイヤーズは、今はメイシーズへ。

2021/1/24 MariY