原稿をタイプする態勢を整えて、お豆を水に浸した。
夕方からの取材が一つある。コロナ禍になって取材仕事がオンラインになった。取材のあとの原稿下書きも、そのまま家で書いてしまうことが習慣になってきた。
原稿を書くあいだにお豆を茹でるのだ。
取材を終えてお鍋を覗いてみると、お水をたっぷり吸ってぷくぷくに膨らんだお豆が、ギチギチと顔を覗かせていた。
カチカチだった乾燥豆がぷっくぷく。
30分置きにタイマーをかけて、キッチンカウンターで原稿を書く。
チリリとタイマーが鳴ればお豆の様子を見る。ことことと水面が揺らぐくらいの火加減のなかで、お豆たちがゆったりと柔らかく様子を変えていく。
お豆の煮えるいい匂いとともに、夕方過ぎの少しひんやりしていた空気がぬくぬくしてくる。
原稿も心なしいい調子に進み、茹で上がったお豆をポイとつまんで原稿を終えました。
2020/10/2 MariY