Earl Thollanderの『Back Roads of Oregon』を見つけたのは、パウエル・ブック(Powell's Books)という本屋だった。
1986年のことで、ダウンタウンのBurnside通りに面する店だった。
ジャズが聴けるレストランはないかと、ガイド誌を求めてたまたま入った本屋だった。元は何かを製造していたか、倉庫だったかを改造した建物だった
フロアがたくさんあり、どのフロアも大きすぎて、なかなか目当てのガイド誌が見つからない。さんざん探して途方に暮れていると、各フロアの隅に膝に毛布をかけて座る女性が目についた。本の案内をしている。訊ねるとレストランやライブのガイドはフリーペーパーで、店の外にあると言っているらしい。よくわからないでいると、店の外まで連れて行ってくれた。
そこで調べたジャズ演奏のギリシャ料理の店〈Opus de Opus〉は、素晴らしい店だった。ボクはこの店も、パウエル・ブックも、すっかり好きになってしまった。
後年の話だが、〈Opus de Opus〉に予約を入れようと調べてみると、店は閉じていた。しかしパウエル・ブックの方は、日本人が多く住むBeaverton地区や、リバーフロントの目抜き通りにお店を増やし、ポートランド国際空港にも出店を持つようになっていた。前にはなかったウェブストアも充実していた。
それでもBurnside通りのパウエル・ブックは、いまでも当時のままだ。その頃から、この店は本当にユニークだった。本は7つの色がついた部屋に分かれて陳列されていた。
書棚を見ると、同じ本なのに値段が違うものがあった。同じ本が20冊くらい並んでいて、本の汚れ方が左から右へとグラデーションしている。つまり、同じ棚で新刊と古書とが併売されていたのだった。
客はスーパーのカゴみたいなものに、気になる本をどんどん入れていく。同じ本の新しいのと古いのとを入れる客がいる。ところどころに用意された椅子に座って、本を選り分けている客がいる。
オープンなカフェがあり、コーヒーを注文し、べたべたのペイストリーを食べて本を読み選んでいる人がいる。選んだ本をレジで精算し、余った本はそこに置いておけば店員がすべてを戻してくれる。
もうなくしてしまったが、もらった店のパンフレットには、米国北西部で最大の本屋と謳ってあったように思う。ぼくは日本に帰って大型書店の知り合いなどに、この店の話をして回ったが、反応は良くなかった。
たぶん、新刊書店は取次につながっていて、古書には古書の卸マーケットがあり、再販防止制度などの壁もあって、話はわかるが日本では現実的ではないと直感したのだろう。
後年、日本にもパウエル・ブックのような本屋ができた。でも少し雰囲気が違う。本好きが集まっているのに本を崇めず、文化が香っているのにドーナツの油が匂うような、あんなお店にはまだ出会っていないのだ。
In 1979, Michael Powell left his Chicago Bookstore to join his father in Portland, purchasing the store from him in 1981. Since that time, Powell's has grown into a "semantic superpower." Michael has been at the center of Portland's social, political and artistic growth over the last twenty years. "When we started bringing authors to town, you couldn't get a decent author to visit Portland. Portland's access to ideas, authors and books has grown because Powell's has grown. It's not cause and effect, but it's synergy."
2021/5/1 NozomN