書斎から NozomN の書斎から

別れのサブスクリプション

 新しい女性とつき合うときは、別れ方を考えてからつき合え。そう忠告してくれたのは、バツイチの先輩だった。たしかに段取りが良い人だった。あるいは女性問題で、よほどの苦労があったのか。

 あのご忠告が、70歳を過ぎて甦るとはねえ。サブスクリプションの解約——。サービスを申し込むときには、どう解約するかなんて、考えもしなかった。

 契約に引導を渡すのは、自分でなければならない。そんなふうに力むことでもないが、もし解約しないまま死んだらどうなるか。パソコンで解約するのは、家内の手には余りそうだ。数えたらサブスク契約は20個に達していたし。

 負債が残る、と言えば大げさだが、定額課金を放っておけば、延滞金が加わるかも知れない。おしまいには、家内の元に矢の催促がくるかも知れない。

 実際には、何とでもなるのかも知れない。みんながみんな、そんなことに困っている様子はない。人と別れるのだって、どうしてもとなれば、手際が良くても悪くても、なんとか別れるものだ。

 それでも、やれるところまではやっておきたい。ヒマはある。それに、死ぬ間際に「やり残したことがある」なんて騒いで、それが「サブスクの解約」だと知ったら、家内の百年の恋も冷めるだろう。全部とはいかないが、なるべく解約しておこう。呆けないうちに、というの期限だ。

2020/10/9 NozomN